「第6回とめ研究所若手研究者懸賞論文」に応募いただいた論文について、最終審査を行なった結果を報告します。
人工知能は3回目のブームを迎え、研究の発展と計算機の性能向上を背景に活用の裾野は一段と広がり続けています。人工知能分野の研究は、今後の人と機械の共生社会を形成する要素として益々重要な役割を担うと見込まれ、研究支援が活発に行われています。
そのため当社は、今後の研究を担う若手研究者の育成と研究への支援の観点から、小さな一歩ですが毎年懸賞論文を募集しており、本企画が、若手研究者の経済面、モチベーション面での支援になれば幸いと考えております。
審査は、論文テーマに沿った、人工知能(知能情報処理技術)に関する内容であるかという観点と、様々な応用分野や要素技術に関しての論文を比較しますので、説明が論理的にわかりやすく展開されているかという観点とで検討して総合判定を行い、1件の最優秀賞と2件の優秀賞を決定しました。
最優秀賞は、「KGSynX:知識グラフと説明可能なフィードバックによるLLMの合成表形式データ生成」(兪科さん、東京大学大学院工学系研究科)です。
論文では、実データの利用が難しい状況に対する代替手段として注目を集める合成データ(synthetic data)に関し、合成データ生成手法と合成されたデータの評価について検討されています。
優秀賞は、「Domain Generalization のためのMixStyle-based Contrastive Test-time Adaptation」(山下滉太さん、名城大学大学院理工学研究科)と、「機械学習と誤り訂正を用いた長時間心電図からの心房細動検出」(鴨澤秀郁さん、秋田大学大学院理工学研究科)の2件です。
前者は、学習した分野・領域・環境とは異なる条件下でも高い性能を発揮できるようにする、ドメイン汎化について、AIが判断するタイミングで適用される手法が提案され、その有効性が検討されています。
後者では、脳梗塞などの重篤な疾患を引き起こす不整脈である心房細動に関し、その診断補助を目的に、長時間心電図からの心房細動検出方法が提案され、その有効性が検討されています。
これら受賞者の方々は勿論、全ての応募者の皆さんには、これからも積極的に社会の変化に対応する新しいセンスを持ち、自らがチャレンジし、具体的に工夫し提案し、そして実現していく、逞しい研究者・技術者になっていただきたいと期待しています。
2025年10月31日
第6回とめ研究所若手研究者懸賞論文
審査委員長
株式会社とめ研究所取締役副社長
坂本 仁